分析用マスタで付加価値を付与
公開されているマスタは、集めて取り込んだ。それでも、その問いには答えられない。
分析者が立てられる問いの範囲を、マスタが決めています。
基本となるはずの公開マスタに、問題が隠れている
「公開されているマスタを集めて紐付ければ良いのでは?」
実際にはそう簡単ではなく、四つの課題によって分析が暗礁に乗り上げます。
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01 公開されているデータに、誤りがある。
薬剤Aに薬剤Bのレセプト電算コードが紐付いている。薬剤C 50mgに薬剤C 100mgのYJコードが紐付いている。参照元である添付文書自体に誤りがあることもある。正として扱うマスタが間違っていれば、そこから先の紐付けはすべて静かにずれていきます。
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02 マスタ同士が、そもそも紐付かない。
生まれが違う——薬価基準収載医薬品管理のためのマスタ、レセプト請求のためのマスタ、添付文書管理のためのマスタ、これらは粒度が異なり、更新タイミングも違う。
生まれが違うものは、簡単には紐付きません。
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03 項目はあるが、値が入っていない。
マスタの定義書に項目が存在することと、そこにデータが入っていることは別。
データ欠損は、定義書からは読み取れません。
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04 分析するには、マスタの種類が圧倒的に不足する。
誤りを直し、紐付けを通し、データ欠損を埋めても、分析はここから先に進めない。
分析に必要な種類のマスタは、そもそも公開されていません。
問いが立つかどうかは、マスタで決まる
標準化・構造化まで済ませたデータに、問いを立てる。次の四つは、いずれも珍しい問いではない。そして、いずれもマスタが無ければ立ちません。
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01 「SGLT2阻害薬の処方量を出したい」
薬効群での集計は、分析のもっとも基本的な形です。ただしSGLT2阻害薬に属する薬剤を、分析者が全て把握しているわけではない。スーグラ、フォシーガ、ルセフィ、アプルウェイ——規格と後発品を含めれば、数は増え続ける。そして公開されている薬効分類では、この群をそのまま取り出せない。分類マスタが無ければ、分析は対象薬剤の列挙から始まります。
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02 「患者ごとの累積投与量を出したい」
抗がん剤の投与量を足し上げたい。ところが公開マスタ上の単位は、エピルビシン塩酸塩注射液10mg/5mLも、アドリアシン注用50も、そろって「瓶」です。瓶の数を足しても投与量にはならない。1瓶が何mgなのかを持つマスタが無ければ、この問いは成立しません。
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03 「この副作用を持つ薬剤の処方有無で層別したい」
分析対象の疾患に、ある副作用の初期症状が関係しているかもしれない。ならばその副作用を持つ薬剤で分けて比較したい——添付文書を1件ずつ読めば分かりますが、対象薬剤の特定だけで莫大な時間がかかる。しかも販売中止になった薬剤の情報は、もう手元にありません。
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04 「10年前の処方と、今の処方を同じ薬として数えたい」
販売名は変わります。カルジール錠200はアセトアミノフェン錠200mg「テバ」になり、「武田テバ」になり、「NIG」になった。そのたびにコードも変わる。長期のトレンドを追うだけの分析が、コードの変遷を追う作業に変わります。
どれも、分析手法の問題ではない。マスタが無いというだけで、分析者のリサーチクエスチョンに答えられなくなる。そのため当社は、分析用マスタを自社で構築しています。
分析用マスタの構築には莫大な労力を要する
副作用マスタの構築を例にすると、下記のような作業が必要になります。
- 01 添付文書収集 — 過去14年分の添付文書を集める。販売中止になった医薬品の添付文書はインターネット上から消えていき、もう手に入らないものが大量にある。当社が持っているのは長年にわたって集め続けてきた結果であり、今から集め始めても、同じものは揃いません。
- 02 副作用抽出 — 次に、副作用の情報を抽出する。添付文書のフォーマットは一様ではありません。新様式・旧様式もあれば、テキストPDF・画像PDFもある。画像からは文字が取り出せないので、そのままでは表として扱えない。読める形に変えるところから始めることになります。
- 03 精査・標準化 — 抜き出した副作用名は、揃っていない。同じ一つの副作用が、いくつもの書き方で記載されています。文字列として抽出するだけでは、同じものだと分かりません。これらを一つのコードへ寄せる判断は、臨床経験のある医療有資格者が行います。
例)「アルカリフォスファターゼ上昇」の表記揺れ
- カタカナの音写 — アルカリフォスファターゼ / アルカリホスファターゼ
- 「の」の有無 — アルカリホスファターゼの上昇 / アルカリホスファターゼ上昇
- 略称のLの字体 — AL-P(大文字)/ Al-P(小文字)/ Aℓ-P(筆記体)
- 誤字 — A1-P(数字のイチ)/ AI-P(大文字のアイ)
- ハイフンの文字種 — AL‐P(ハイフン)/ AL-P(全角マイナス)/ Al‒P(フィギュアダッシュ)
- 語尾 — ALP上昇 / ALP増加
- 血中の有無 — 血中ALP増加 / ALP増加
- 他の検査との同居 — AST、ALT、Al-P上昇等の肝機能検査異常 / 肝機能異常(AST、ALT、Al-Pの上昇等)
これらが掛け合わさって、一つの副作用に30種類以上の書き方が生まれる。これはほんの一例であり、分析用マスタ構築には気の遠くなる作業が必要になります。
分析者の問いに答えるために
当社では分析用マスタ「H2MS」をご提供しています。
主な対象は、電子カルテデータ、レセプトデータ・DPC調査データ。この三大医療ビッグデータを分析するために必要な分析用マスタ5群45種で整備しています。
分析用マスタ「H2MS」
| 群 | 種類 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 医薬品 | 16種 | 基本/レセプト電算/移行先/WHO ATC/EphMRA ATC/87分類/成分/単位換算/適応症/剤形/薬価履歴/レセ電紐付け/薬物動態/重大な副作用/その他の副作用/添付文書本文 |
| 傷病 | 5種 | 傷病/修飾語/傷病移行先対応表/ICD10/社会保険表章用疾病分類 |
| 検査 | 7種 | 検査分類/分析物/識別/材料/測定法/結果識別共通/結果識別固有 |
| 施設 | 9種 | 施設/病院・診療所/施設移行先/医療機関コード紐付/標榜診療科/標準化診療科/施設基準/市区町村・医療圏/経営体 |
| レセ電・その他 | 8種 | 医科診療行為/ICD9CM/歯科診療行為/調剤行為/特定器材/コメント/診療年月-バージョン対応表(点数・医薬品) |
このH2MSは、付加価値の付与だけでなく、前段のデータ標準化・構造化そのものを支えています。
H&H CONNECTのマスタ構築体制
AIとロジックで可能な部分は自動化します。
しかし、AI・ロジックでは決められない紐付けを判断するのは、臨床を10年以上経験し、医療データに精通した医療有資格者です。読むのは書かれた文字だけではありません。その医薬品・傷病・検査・施設について徹底的に調査し、臨床を知らなければ不可能な判断を下していきます。
システムエンジニアは消えていく添付文書を集め続け、画像PDFも読める形に変え、粒度の違う公開マスタを突き合わせられる構造に組み直す。医療有資格者の判断を全件へ反映し、整合チェックで漏れを潰す。判断の前後を引き受けることが、この役割の仕事です。
こうした状態にあれば、ご相談ください
- 分析したい内容は決まっているが、どのようなマスタが必要なのかわからない
- 標準化・構造化を進めたいが、寄せる先の標準マスタが手元に揃っていない
- EphMRA ATC毎での集計をしたいのに、対象薬剤の列挙から始めることになっている
- 抗がん剤の累積投与量を出したいが、単位が「瓶」のままで足し上げられない
- 特定の副作用を持つ薬剤で層別したいが、該当薬剤の特定に時間がかかりすぎる
- 販売名変更をまたいだ長期の処方トレンドが追えない
- 公開マスタを集めて紐付けたが、主キーも粒度も合わず作業が終わらない
- 数年前のデータを分析したいのに、手元のマスタが最新分しかなく紐付かない
- 施設単位で分析したいが、同一施設に医療機関コードが複数あって集約できない